ゲスト講師の声
橋爪 大三郎 氏
橋爪 大三郎 氏
社会学者 ・東京工業大学名誉教授日本人のつくる組織は、優秀である。抜群のチームワークで難局を乗り越え、課題を解決してきた。日本人のつくる組織は、愚かである。未知の文脈に置かれると、なすすべがなくなる。近代というステージにいきなり上げられた日本は、手持ちの社会的資源をやりくりし、成功を収め、失敗を重ねてきた。いまそのステージは、終わろうとしている。日本という枠が桎梏となる。これまでの文脈の延長上には、活路が見出せないのだ。
日本の企業が、海外に眠る社会的資源を活用し、世界を先駆けるトップ企業に脱皮し、活躍し続けるためには、細くて険しいひと筋の道をたどらなければならない。その道がどこにあるのか、いまは誰も知らない。不識庵で学ぶうち、霧が晴れるように、その道が現れてくるだろうと期待したい。
(平成29年9月寄稿)
森本 あんり 氏
森本 あんり 氏
国際基督教大学 名誉教授、東京女子大学 学長現代は、あらゆる価値が相対化され、伝統的な権威が失墜しつつある時代です。日本では「判官びいき」という言葉があるように、体制派よりも反体制派、正統よりも異端に共感が集まるようですが、現状への不満をかこつだけでは、新しい勢力を作ることはできません。飲み屋の片隅で上司の悪口を言うだけの「片隅異端」ではなく、腹の据わった信念をもって正々堂々と挑戦する人びとが集まってこそ、社会は変わってゆくのだろうと思います。それには、成熟した思考力と深化した表現力、異なる世界観との開かれた対話が必要でしょう。不識塾がこのような知的出会いの道場となり、日本の次世代を担うリーダーたちを育成し続けることを願っています。
(平成29年9月寄稿)
長谷川 三千子 氏
長谷川 三千子 氏
埼玉大学名誉教授これからの企業リーダーに求められるものは何だろうか?
グローバルな視野、正確な情報を収集する能力、危機に際して瞬時に適切な判断を下す力、プレゼンテーションの能力、語学力、etc. etc.……しかし、そうした能力のあれこれを身に付けようと、あくせくすればするほど、せっかく優秀な人間が、どんどん小粒な優等生になっていってしまう――そういう厄介な逆説が常につきまとっている。実は、リーダーに求められるものはただ一つ、人物の大きさだ、と言ってしまった方がはるかに話が早い。そして人物の大きさというものは、むしろ役に立たないことに打ち込むなかから自ずと芽生えてくる――この「不識塾」という逆説的な名は、そういう主張を語っているように思われる。
(平成23年1月寄稿)
故 伊東 俊太郎 氏
故 伊東 俊太郎 氏
東京大学名誉教授 国際比較文明学会終身名誉会長確かな世界的視野の下で、地球社会の未来を見据えたエリートの養成を
日本の未来は暗いと言われている。しかしそうではない。広い世界的視圏において、人類社会の未来をしっかりと見定めて考える日本人が少なくなっていることに問題があるのだ。これからの文明が抱えこむ諸問題が、他ならぬこの日本に先駆けて集中的に現出している。それだからこそこの解決の途をさがし出すことが、日本のエリートに求められている。そしてそれはやがて世界の問題解決にも役立つ筈である。不識塾につどう人々は、こうした課題に挑戦する素質と熱意を持っていることは、これまで塾の集会に参加し、講義し、議論した経験からも十分察することができる。これからも不識庵のセミナーが、その切磋琢磨の探究を続け、よき実りをもたらすことを祈っている。
(平成23年1月寄稿)
佐伯 啓思 氏
佐伯 啓思 氏
京都大学名誉教授「歴史の危機」という言葉があります。これまで信じられてきた思考体系が崩壊し、だけどまだ新しいそれは見当たらず、確信が喪失した状態です。この言葉を使った哲学者のオルテガによると、過去何度かこうした「危機」の時代があったといいます。オルテガの生きた20世紀の初頭もそういう時代でした。おそらく今日もまた「歴史の危機」の時代です。この時代にこそ、一人ひとりが、日本という自分たちの足元を見つめ、自前の信念をもつことが求められます。次世代のグローバル・リーダーに求められるのは、経済だけではなく政治や文化や歴史をみる目です。「不識塾」の密度の濃い講座における、いっそう熱気に満ちた議論の展開を期待します。
(平成23年1月寄稿)
山内 昌之 氏
山内 昌之 氏
東京大学名誉教授トップリーダーを育てる機動戦 ―不識塾に期待する
中谷巌氏が一般社団法人不識庵を立ち上げ、不識塾を開いた。経営トップの候補生だけでなく、将来の日本の舵取りを期待される人材育成も目指すようだ。中谷氏は、多摩大学学長として40歳代CEO育成講座を成功させた。新しい塾でも、ビジネスの世界だけでなく、世に志をもち大局観と総合力に秀でた人材が育つことを期待したい。
それにしても不識庵や不識塾とは素晴らしい名前をつけたものだ。「しらないこと」の意味を表面から問いながら、「しること」に人びとの意欲と情熱を導こうとする使命感を感じさせる。上杉謙信の庵号と同じ名の塾が、謙信のような神出鬼没の才でもって、日本のトップリーダーを育てる現代の機動戦に成功することを祈っておきたい。
(平成23年1月寄稿)