『佐藤優の頂上対決 ― 我々はどう生き残るか』(連載第67回)

【見出し】資本主義にいかに倫理を導入するか
お互い独立を保つべき政府と中央銀行が一体化し、デフレ脱却のため金融政策や国債、株式購入などで大量に市場にお金を供給してきた日本。そこにコロナ禍の経済対策も加わり、国の借金は雪だるま式に膨らんでいる。はたしてこのまま突き進んで大丈夫なのか。新自由主義と決別した経済学者の警告。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/02090555/?all=1#google_vignette

以下、本文より抜粋。

・いままでは財政健全化が重要な政策課題で、増税によってバランスを取るのが一般的でした。それがMMT(現代貨幣理論)では、税金で財源を作るのも、国債で財源を作るのも質的に何ら差がないということになった。だから財政赤字になっても、まったく問題がないと考える。議論はあるにしても、いまMMTが正しい理論であるかのように世界経済は動いています。

・MMTでは、インフレになったら国家はその権力を使って大増税すればいいと考えます。でも少なくとも民主主義国家では、増税は非常に困難なプロセスを伴い、インフレを止めるスピードで増税ができるとは到底思えません。

・人間には想定外のことがたくさん起きる。大災害もそうですし、一年前に新型コロナウイルスが出てくることもまったく予測できなかった。すべてを予測可能なヘッジ商品として取引できると考えるのは人間の傲慢さだと思います。

・マーケット万能主義の決定的欠陥は、人間は何でも計算して予想を立てて対応できると考えていることです。人間が頭の中で合理的に考え、設計して構築すれば、歴史を作っていけると錯覚しているのです。しかし社会はそういうものではない。謙虚な姿勢でいかないと大きな失敗を招くと思います。

・倫理なき資本主義では人類がもたないと思うのです。(不識塾を受講されている)大手企業の経営幹部の考え方が変われば、彼らが日本の企業を変えていくかもしれない。株主至上主義ではなく、もう少し大きな社会的責任感を持った組織としての企業を作ってくれるのではないかと期待しています。資本主義世界にどう倫理を導入していくか、これがこれからの最大の課題だと思います。