青天白雲塾
2017年10月18日

「フィールドワークを通じて見た日本の文化」講師:菅野覚明先生(東京大学名誉教授・皇學館大学教授)

講師
東京大学名誉教授・皇學館大学教授
菅野 覚明 氏

 

 「青天白雲塾」のフィールドワークは、チームに分かれた受講生が、テーマに沿って図書や論文などのさまざまな文献を調べ、専門家や研究員の方々へのインタビューなど2泊3日の行程を組み立てます。チームが一丸となって取り組む、フィールドワークならび検証結果の発表は、「青天白雲塾」研修のハイライトともいえるプログラムになっています。
 今回のフィールドワークは「神道(『古事記』)にみる日本文化の真髄」をテーマに、「伊勢・奈良」「出雲・隠岐」「対馬・壱岐」「遠野(岩手県)」を訪問しました。
 前回の講義では社会学者の橋爪大三郎先生から、日本史の流れに加えて、『古事記』の成り立ちから、古代の中国を中心とした日本と東アジア諸国の関係、さらには近代に入り、民俗学者の柳田國男が模索した儒教や仏教の影響を受ける前の日本の原風景について、受講生がフィールドワークに向けた仮説を考える上で示唆に富んだお話を頂戴致しました。
 さて、7月下旬に実施したフィールドワークでは、受講生は実際に現地を歩き、地元の方々や有識者の方々から、普段聞くことのない貴重なお話をいただきました。フィールドワーク終了後、現地で得た知見をもとに議論して臨んだ仮説検証は、各チーム独自の考えが反映され、大変熱が入った発表となり、受講生間の質疑応答も大変な盛り上がりを見せました。
 受講生の発表に対して講評して下さったのは、日本の倫理思想史がご専門の皇學館大学教授の菅野覚明先生。4つの地域を探求し、古代の人々の考えや行動を理解しようとフィールドワークにどっぷりと浸ってきた受講生も、当時の『古事記』の位置づけや、国家や国境についての考え方などについて、菅野先生のご指導によってまだ自分達は現代の枠組みの中で考えているという気付きを得たようです。
 受講生の発表の後、菅野先生には、「日本的思想の基調と変遷」というテーマでご講義をいただきました。日本的思想の根底には、純粋無私であることが真理であり、「捨てる」ことこそが純粋無私の実現だという「日本の無私の伝統」があるというお話は、受講生が初めて聞く内容であったにも関わらず、大変共感できるものだったようです。菅野先生のご講義を受けた受講生が、今後どのように自身の経験や考え方と日本的思想を組み合わせていくのか、大変楽しみです。

(野口優子)

 

~受講生の声~
「日本の「捨てる」価値観や日本的思想について、非常に得心がいく説明でした。菅野先生の言葉で「言葉は多義的でブレがあるので、正しく伝えることはできない。但し、ブレがあるからこそコミュニケーションが成り立つ」ということと、「日本的価値観は普遍化が難しく、理解されにくい」ということは、日々の生活の中でも意識すべき点と感じた。」
[システム 男性]

「日本人の思想の根底に「無私」があり、その上に、「武士道」を始め「道」ができたと理解しました。現代の私たちが受けてきた日本の教育は、ある意味西洋的な側面が強いと思われますが、私が感覚的に日本的な思想を理解できるのは「無私」という価値を無意識に持ち続けているからではないかと思います。西洋文化が日本の現代文化の表層にあったとしても、私たちの中で「無私」徳として生き続けているのだと気付きました。」
[製薬 男性]

「日本的思想の特徴である「貯めずに捨てる」という思想。日本人は現代も失っていないということでしたが、まだ自分の理解が及ばないので、これからも自分なりに探求してみたいです。」
[小売 男性]

 

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