ゲスト講師の声

社会学者 ・東京工業大学名誉教授
橋爪 大三郎 氏

 日本人のつくる組織は、優秀である。抜群のチームワークで難局を乗り越え、課題を解決してきた。日本人のつくる組織は、愚かである。未知の文脈に置かれると、なすすべがなくなる。近代というステージにいきなり上げられた日本は、手持ちの社会的資源をやりくりし、成功を収め、失敗を重ねてきた。いまそのステージは、終わろうとしている。日本という枠が桎梏となる。これまでの文脈の延長上には、活路が見出せないのだ。
 日本の企業が、海外に眠る社会的資源を活用し、世界を先駆けるトップ企業に脱皮し、活躍し続けるためには、細くて険しいひと筋の道をたどらなければならない。その道がどこにあるのか、いまは誰も知らない。不識庵で学ぶうち、霧が晴れるように、その道が現れてくるだろうと期待したい。

(平成29年9月寄稿)

講師プロフィール:橋爪 大三郎 氏

1948年、神奈川県生まれ。1972年、東京大学文学部社会学科卒業。1977年、同大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。執筆活動を経て、1989年、東京工業大学工学部助教授、1995年、同教授。2013年、退職。東京工業大学名誉教授。著書には『言語ゲームと社会理論―ヴィトゲンシュタイン・ハート・ルーマン』(勁草書房、1985年)、『アメリカの行動原理』(PHP新書 、2005年)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫、2006年)、『ふしぎなキリスト教』(大澤真幸 氏との共著、講談社現代新書、2011年、2012年新書大賞受賞)、『教養としての聖書』(光文社新書、2015年)、『丸山眞男の憂鬱』(講談社選書メチエ、2017年)、『世界は四大文明でできている』(NHK出版新書、2017年)などがある。

 

 

国際基督教大学(ICU)人文科学科教授・学務副学長
森本 あんり 氏

 現代は、あらゆる価値が相対化され、伝統的な権威が失墜しつつある時代です。日本では「判官びいき」という言葉があるように、体制派よりも反体制派、正統よりも異端に共感が集まるようですが、現状への不満をかこつだけでは、新しい勢力を作ることはできません。飲み屋の片隅で上司の悪口を言うだけの「片隅異端」ではなく、腹の据わった信念をもって正々堂々と挑戦する人びとが集まってこそ、社会は変わってゆくのだろうと思います。それには、成熟した思考力と深化した表現力、異なる世界観との開かれた対話が必要でしょう。不識塾がこのような知的出会いの道場となり、日本の次世代を担うリーダーたちを育成し続けることを願っています。

(平成29年9月寄稿)

講師プロフィール:森本 あんり 氏

1956年、神奈川県生まれ。米国プリンストン神学大学でPh.D.(組織神学)。国際基督教大学人文科学科教授(哲学宗教学)。プリンストン神学大学、バークレー連合神学大学で客員教授。2012年より国際基督教大学学務副学長。著書には『ジョナサン・エドワーズ研究―アメリカ・ピューリタニズムの存在論と救済論』(創文社、1995年)、Jonathan Edwards and the Catholic Vision of Salvation(Penn State University Press, 1995)、『アジア神学講義』(創文社、2004年)、『アメリカ・キリスト教史』(新教出版社、2006年)、『アメリカ的理念の身体―寛容と良心・政教分離・信教の自由をめぐる歴史的実験の軌跡』(創文社、2012年)、『反知性主義』(新潮社、2014年)などがある。

 

 

埼玉大学名誉教授
長谷川 三千子 氏

これからの企業リーダーに求められるものは何だろうか?
 グローバルな視野、正確な情報を収集する能力、危機に際して瞬時に適切な判断を下す力、プレゼンテーションの能力、語学力、etc. etc.……しかし、そうした能力のあれこれを身に付けようと、あくせくすればするほど、せっかく優秀な人間が、どんどん小粒な優等生になっていってしまう――そういう厄介な逆説が常につきまとっている。実は、リーダーに求められるものはただ一つ、人物の大きさだ、と言ってしまった方がはるかに話が早い。そして人物の大きさというものは、むしろ役に立たないことに打ち込むなかから自ずと芽生えてくる――この「不識塾」という逆説的な名は、そういう主張を語っているように思われる。

(平成23年1月寄稿)

講師プロフィール:長谷川 三千子 氏

東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科哲学専修課程博士課程単位取得。東京大学文学部助手、埼玉大学教養学部講師、同助教授、教授を歴任。2011年、埼玉大学名誉教授。2013年、NHK経営委員就任。現在に至る。著書には『からごころ~日本精神の逆説』(中央公論新社、1986年)、『バベルの謎~ヤハウィストの冒険』(中央公論新社、1996年、1997年度和辻哲郎文化賞受賞)、『民主主義とは何なのか』(文春新書、2001年)、『日本語の哲学へ』(ちくま新書、2010年)などがある。

 

 

東京大学名誉教授
国際比較文明学会終身名誉会長
伊東 俊太郎 氏

確かな世界的視野の下で、地球社会の未来を見据えたエリートの養成を
 日本の未来は暗いと言われている。しかしそうではない。広い世界的視圏において、人類社会の未来をしっかりと見定めて考える日本人が少なくなっていることに問題があるのだ。これからの文明が抱えこむ諸問題が、他ならぬこの日本に先駆けて集中的に現出している。それだからこそこの解決の途をさがし出すことが、日本のエリートに求められている。そしてそれはやがて世界の問題解決にも役立つ筈である。不識塾につどう人々は、こうした課題に挑戦する素質と熱意を持っていることは、これまで塾の集会に参加し、講義し、議論した経験からも十分察することができる。これからも不識庵のセミナーが、その切磋琢磨の探究を続け、よき実りをもたらすことを祈っている。

(平成23年1月寄稿) 

講師プロフィール:伊東 俊太郎 氏

1930年、東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。同大学院修士課程修了。米国ウィスコンシン大学よりPh.D.(科学史)。東京大学教授。国際部本文化研究センターなどを歴任。2009年4月に瑞宝中綬章を受章。2011年5月に日本科学史学会特別賞を受賞。著書には『文明における科学』(勁草書房、1976年)、『比較文明』(東京大学出版会、1985年)、 『文明の誕生』(講談社学術文庫、1988年)、『伊東俊太郎著作集』全12巻(麗澤大学出版会、2008年~2010年)、『変容の時代: 科学・自然・倫理・公共』(麗澤大学出版会、2013年)などがある。 

 

 

京都大学名誉教授
佐伯 啓思 氏

 「歴史の危機」という言葉があります。これまで信じられてきた思考体系が崩壊し、だけどまだ新しいそれは見当たらず、確信が喪失した状態です。この言葉を使った哲学者のオルテガによると、過去何度かこうした「危機」の時代があったといいます。オルテガの生きた20世紀の初頭もそういう時代でした。おそらく今日もまた「歴史の危機」の時代です。この時代にこそ、一人ひとりが、日本という自分たちの足元を見つめ、自前の信念をもつことが求められます。次世代のグローバル・リーダーに求められるのは、経済だけではなく政治や文化や歴史をみる目です。「不識塾」の密度の濃い講座における、いっそう熱気に満ちた議論の展開を期待します。

(平成23年1月寄稿)

講師プロフィール:佐伯 啓思 氏

1949年、奈良県生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学大学院経済学研究課博士課程単位取得。京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在京都大学名誉教授、同大学こころの未来研究センター特任教授。専攻は社会経済学、社会思想史。サントリー学芸賞、東畑記念賞、読売論壇賞、正論大賞など受賞多数。著書には『隠された思考―市場経済のメタフィジックス』(筑摩書房、1985年、1985年度サントリー学芸賞受賞)、『「アメリカニズム」の終焉』(TBSブリタニカ、1993年、1994年度東畑記念賞受賞)、『現代日本のリベラリズム』(講談社、1996年、1997年度読売論壇賞受賞)、『経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ』(講談社現代新書、2012年)、『西田幾多郎 無私の思想と日本人』(新潮新書、2014年)、『経済成長主義への訣別』(新潮選書、2017年)などがある。

 

 

東京大学名誉教授
山内 昌之 氏

トップリーダーを育てる機動戦  ―不職塾に期待する
 中谷巌氏が一般社団法人不職庵を立ち上げ、不職塾を開いた。経営トップの候補生だけでなく、将来の日本の舵取りを期待される人材育成も目指すようだ。中谷氏は、多摩大学学長として40歳代CEO育成講座を成功させた。新しい塾でも、ビジネスの世界だけでなく、世に志をもち大局観と総合力に秀でた人材が育つことを期待したい。
 それにしても不職庵や不職塾とは素晴らしい名前をつけたものだ。「しらないこと」の意味を表面から問いながら、「しること」に人びとの意欲と情熱を導こうとする使命感を感じさせる。上杉謙信の庵号と同じ名の塾が、謙信のような神出鬼没の才でもって、日本のトップリーダーを育てる現代の機動戦に成功することを祈っておきたい。

(平成23年1月寄稿)

講師プロフィール:山内 昌之 氏

1947年生まれ、歴史学者。専攻は中東 ・イスラーム地域研究と国際関係史。明治大学研究 ・知財戦略機構国際総合研究所(中東研究部門)特任教授。東京大学名誉教授。サントリー学芸賞、吉野作造賞、司馬遼太郎賞、紫綬褒章など受賞多数。著書に『現代のイスラム――宗教と権力』(朝日新聞社[朝日選書]、1983年)、『スルタンガリエフの夢――イスラム世界とロシア革命』(東京大学出版会、1986年/岩波現代文庫、2009年)、『瀕死のリヴァイアサン―ペレストロイカと民族問題』(TBSブリタニカ、1990年)、『ラディカル・ヒストリー―ロシア史とイスラム史のフロンティア』(中公新書、 1991年)、『新・地政学 - 「第三次世界大戦」を読み解く』(佐藤優 氏との共著、中公新書ラクレ、2016年)などがある。

不識庵