不識塾
2018年3月9日

「資本主義のその先を考えるために」講師:大澤真幸先生(社会学者)

講 師:大澤 真幸 社会学者

テーマ:「資本主義のその先を考えるために」

 

 「資本主義のその先」を考えるには、まず資本主義を駆動させている核心を理解する必要がある。今回講座はゲスト講師に大澤真幸先生をお招きした。
 資本主義は基本的に宗教現象であることがポイントだ。宗教改革を推し進めた人達の宗教態度が意図せざる形で資本主義に展開したというマックス・ウェーバーのテーゼには根本的な真実が含まれている。
 キリスト教・ユダヤ教が現代に至るまで世界史的影響を持った背景には「苦難の神義論」がある。神が創られた完璧な世界になぜ悪や不幸がはびこるのか。これを説明するのが苦難の神義論であり、プロテスタントはその究極の解答だ。
 プロテスタントは一枚岩ではないが、ウェーバーが一番重視したのはカルヴァン派(改革派)、予定説であった。一神教の論理をとことん突き詰めると予定説に行き着き、苦難の神義論に対する最終解答が予定説だ。
 神は偉大であり既に全てを知っている。予め結果が決まっているなら努力しても無駄であるのに、カルヴァン派の人々は、なぜ禁欲的な態度を取れるのか。
 予定説では自らが救われることを仮定した上で(最後の審判で合格するのにふさわしい態度を選択し)行動し、自らの無知(未知)を恐れなくなる。そこに本当に利益があるか分からない新しい領域に、あえて進出したり、投資ができるのは、予定説の精神構造があるからだ。
 (無知・未知に人をコミットさせる)予定説の行動パターンの原型と近代科学の類似点、二種類の知識「知恵」と「技術知」について等々、大澤先生の講義は続き、終盤、神がいなくなる「資本主義のその先」で機能する「十二頭目のらくだ」(寓話)にて締め括られた。
 塾生からは「日本企業がグローバル化できない本当の理由は何か」について、課題図書『空気の研究』(山本七平)を参照した発表があった。
 塾生発表後、不可能と思われていること(不可能性の臨界を)どう超えていくか、大澤先生は『日本史のなぞ なぜこの国で一度だけ革命が成功したのか』を通して解説された。
 「資本主義のその先」とともに、日本文化の特異性について改めて考える講座になった。

 (中村真理)

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