青天白雲塾
2017年11月7日

「長期的な視点で世界を見通す」講師:水野和夫先生(法政大学法学部 教授) / 矢野和男先生(株式会社日立製作所 理事 研究開発グループ 技師長)

講師
水野 和夫 氏 法政大学法学部 教授
矢野 和男 氏 株式会社日立製作所 理事 研究開発グループ技師長

 

 前回の中島岳志先生の講座で近代を理解する入り口に立った受講生。近代が21世紀の社会や経済に与えた影響はどのようなものだったのか。現代の私たちが、当たり前のように認識している価値観も、その成り立ちには近代という時代が大きく関わっていたことを学びました。
 応用・まとめ講座の2回目は、近代を始点に歴史的な流れの中で、変貌する世界の動きを捉えることを目的に、「資本主義」と「人工知能(AI)」の2つのテーマについて、1日で議論します。前半、「資本主義の終焉と歴史の危機」をテーマにご講義を頂いたのは、法政大学教授の水野和夫氏。資本主義が発生した近代を、中世という時代から眺め、経済活動に大きな影響を与えてきた原理原則の変遷をお話し頂きました。近代に入り、「より遠く、より速く、より合理的に」という理念のもとに行動した結果、格差の拡大やゼロ金利などの現象に見られるように、近代資本主義は行き詰まりを起こしているという水野先生の説明を聞きながら神妙な面持ちの受講生。私たちは、まだ全ての人類が幸せになる方法を持ち合わせていない、という水野先生の言葉は、21世紀に生きる私たちが、どのような理念や価値観を持ちビジネスや社会とかかわっていくか、真剣に考えるきっかけになったようでした。
 続く、午後の講義では、AI研究の第一人者である株式会社日立製作所の矢野和男氏に「2030年の世界における人工知能の役割」をテーマに、AIの基本的な知識とビジネスとのかかわりについてご講義頂きました。AIは、ここ数年、ほぼ毎日ニュースメディアで目にする用語となり、その多くは、人間の仕事を奪うものという論点で語られる傾向にありますが、矢野先生によると、AIは、単なるブームではなく、人間の仕事を奪うものでもない、ビジネスで具体的に使うもの。ウエラブルセンサーによってデータ化されたご自身の行動をAIが分析した結果から、人間の行動と幸福感に関連性を見出された矢野先生。今では、幸福度を測ることで、組織の活性化を推進するビジネスにAIが活用されています。
 幸福は、人それぞれ定義や尺度が異なるといわれます。変貌する世界の動きをとらえ、自社を牽引していく受講生が、“幸せ”をどのように今後の生き方やビジネスに反映していくのか長期的な視点で期待したいと思います。

(野口優子)

 

~受講生の声~

【水野和夫先生の講義を受けた受講生の感想】

「人類全てが幸せになる方法をまだ確立していないという水野先生の言葉は、胸に刺さりました。資本主義社会という前提において、全ての人をどのように幸せにするかを考えなければならないと感じました。」
[製薬  男性]

「全ての人が豊かになれる仕組は今なお発見されていないという水野先生のお話に考えさせられました。20世紀初頭と違い低金利の今、ケインズの言葉で言う “貨幣愛”の次のステージとして、何を愛していくことになるのか、長期的な視点で考えていかなければならないと思います。」
[住宅 男性]

【矢野和男先生の講義を受けた受講生の感想】

「AIが現実世界の課題に対して確実な成果を出し始めていることを知って、大変驚いた。同時に、AIがどれだけ進化しても、それをつくっているのが人間であり、使い手の思考が重要だと学んだ。」
[製造 男性]

「AIは人間の代替になると思っていたので、矢野先生の講義は目からうろこでした。今後、AIを活用する側として、インプットするデータに必要な“アクションの軸”を人間が見つける困難さがあることを学びました。AIが分析するために、どのように人間が補うべきか、今後の課題となりました。」
[製造 女性]

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