不識塾
2018年3月1日

「AIの現状と未来の可能性」講師:中島秀之先生(東京大学 先端人工知能学教育寄付講座 特任教授・公立はこだて未来大学 名誉学長)

講 師:中島秀之 東京大学 先端人工知能学教育寄付講座 特任教授・公立はこだて未来大学 名誉学長

テーマ:「AIの現状と未来の可能性」

 

 今回講座はゲスト講師に人工知能研究の大家である中島秀之先生をお招きした。
 人間は情報が不足した状況で適切に処理するのが非常に上手く、この能力こそ知能と定義できる。情報が完全にあってアルゴリズムで正しい答えを導き出すのがITだとしたら、情報が不足している中(ヒューリステックで)処理しているのがAIである。AIはITの先鋒だ。かつて仮名漢字変換や郵便番号自動読み取りもAIだったが、実用化されるとAIと呼ばれなくなる。
 知能の本質が記号処理、パターン認識(Deep Learningのように世界の記号化)であることと併せて重要なのは状況依存性(環境との相互作用)である。
 環境を上手く利用するにことにおいて日本語は良い仕組みを持っている。川端康成『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」を英訳し、“The train came out of the long tunnel into the snow country.”(E.G. Seidensticker)、両者を絵にすると、日本語は汽車の乗客の視点で(トンネルから外に出る前の光景が)描かれ、英語では汽車がトンネルから出てくるのを上空から眺めている絵になる。日本語が虫の視点であるのに対し、英語は上空から俯瞰する鳥の視点であり(神の目からは)状況依存視点が取りにくい。
 西洋の決定論的物理から(神の視点から虫の視点へ)パラダイム転換が起こったようにAIにおいても、環境を利用することで日本は優位性を持てるのではないか。
 中島先生からはAI研究の歴史、環境と知能、情報処理技術による新しい社会の仕組みそのものの設計・提案(想像力)の重要性、日本における課題等、多岐学問領域からご講義いただいた。
 AIで世界はどう変るのか、AIの人間を越える部分と超えない部分、AIと共生できる世界をいかに構築するか、人間はどういう存在でありたいか、塾生発表では哲学的思索が繰り広げられた。

 (中村真理)

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