不識塾
2018年1月17日

「貨幣とは」講師:岩井克人先生(国際基督教大学特別招聘教授・東京大学名誉教授)

講 師:岩井克人 国際基督教大学特別招聘教授・東京大学名誉教授
テーマ:「貨幣とは」

 

 本年度の公開講座は「貨幣」をテーマに開催された。まず塾生全4チームから「資本主義世界の将来」について金融・貨幣の不安定性、AIがもたらす世界、格差拡大、文明の衝突とグローバリゼーションを副題とした発表があった。
 ゲスト講師には昨年文化功労者に顕彰された岩井克人先生をお招きした。
 おカネが価値を持つのは、他人が価値として受け
取ってくれるからだ。貨幣は貨幣を使う社会が価値を与えるというのが、貨幣論の第一命題である。
 貨幣の価値とは、他人(社会)が決める。では、他人はなぜおカネに価値があると思うのか。それは、多くの他人が価値あると思っていると思っているからだ。貨幣は(貨幣としての機能が貨幣としての存在である)機能論の究極にある。
 コトバが意味を持つのも同様の仕組みだ。単なる音声(空気振動)が例えば「泥棒」を意味するのは、同じ集団内の全ての人間が他の全ての人間がその音声は「泥棒」という意味であると思っていると思っているからである。
 貨幣もコトバも自己循環論法の産物だ。つまりおカネの価値やコトバの意味も実体的根拠がなく、本質的に不安定であることも意味する。
 「貨幣」や「コトバ」は人間が自然の法則とは無関係に自ら創り出した「虚構」である。貨幣経済はバブル(恐慌)とパニック(ハイパーインフレ)を引き起こす可能性を常に持つ。ファシズムは人々がコトバの内容に関係なく、指導者のコトバ自体に熱狂し、ポピュリズムはメディアなどで空疎なコトバが氾濫し、だれも真実を語るのを諦める。現代社会をいかに安定化できるかは、人文社会科学の重要な目標といえる。
 資本主義が安定的であるためには、高い倫理観を持ったエリートの存在が不可欠であり、自由放任思想だけですべてが回るという考え方には賛成できないと岩井先生は説かれた。
 貨幣の純粋な投機的性格、ビットコインに未来がない根拠等、貨幣とは何かについて、多岐に亘る学問領域から議論が繰り広げられた。

 (中村真理)

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