不識塾
2018年3月16日

「ハラリのHomo Deus について―新しいヒューマニズムの可能性」講師:瀧澤弘和先生(中央大学経済学部教授)

講 師:瀧澤 弘和 中央大学経済学部教授 (プロフィールの詳細はこちら)

テーマ:「ハラリのHomo Deus について―新しいヒューマニズムの可能性」

 

 2017年最後の講座は『サピエンス全史』の続編“HomoDeus“を課題図書として採り上げた(必読箇所は8章The Time Bomb in the Laboratory 、9章The Great Decoupling)。本書で著者ハラリは現在のAI・遺伝子工学の発展に着目し強い生物学的アプローチを提示している。
 われわれには、強力なアプローチが出現すると、それに伴って新たに人間観・社会観・世界観を一元的に理解しようとする傾向がある。それで全てが解決すると思うのはハイエクの言葉で言う「致命的な思いあがり」である。
 我々人間は自分がどのような存在と思っているか。この自身の自己認識(=自己概念化)が、我々が生きる社会を作り出し、その社会の中で我々はそうなっていく(予言の自己成就)。つまり、ハラリが予測する世界になっていくと思ってしまうと本当にそうなってしまう。だからこそ新たな人間観を作り出すことが重要である、と瀧澤弘和講師はハラリの自然主義的人間観に異議を唱えた。
 『サピエンス全史』のキーワードでハラリがいう「虚構」概念とは、大規模協力を可能とする「制度をつくる本能」と言い換えられる。
 人間らしさを特徴づけるのは、制度をつくり、その中で生きているということであり(トマセロ)、物理世界にない制度を作ることができることこそが人間の文明の本質的かつ顕著な特性といえる。
 瀧澤講師は「制度を作る人間」に焦点を当て、新しいヒューマニズムの可能性を探求された。塾生からは「リベラルデモクラシーの将来」について発表があった。
 自由とは何か、自分たちにとって何が大事な価値なのか、それを守るにはどうしたらいいか、そして、人間の本性を固定するのではなく理解に深みを持たせるにはどうするか、改めて考える講座になった。

 (中村真理)

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